労働契約と就業規則

  • 2016.09.19 Monday
  • 12:13
社会保険労務士の家入です。

従業員の採用時に、個別に労働契約を締結したとします。その契約内容が就業規則の内容と相違していた場合に、どの様な問題が生じるのか考えてみたいと思います。

労働契約法では、12条において
『就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について は、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。』
とあります。

『企業経営の観点から、労働条件を引き下げる必要が生じて、個々の従業員がこれに同意していても、個別労働契約によって引き下げはできない。』つまり、就業規則の規定が最低基準としての効力を要することになります。労働条件を変更しようとする場合は、労働協約又は就業規則の改正ということになります。

ここで、判例を見てみたいと思います。

  • 賃上げ率と賞与支給率を維持できない小企業が、労働者の同意を得て、賃上げと賞与をより低い率で支給し続けた。これに対し労働者は、就業規則のとおりの率での支給を請求した。

    【判決】就業規則の基準を引き下げる労働契約が黙示に成立していたとして、『請求棄却』((有)野本商店事件 東京地裁判 平9.3.25)


  • 使用者と組合が、退職金について支給率を変更するための交渉を開始し、交渉妥結までの暫定措置として、算定額をその年の基本給額に凍結することを、口頭で合意した。これに対し退職者が、就業規則どおりに賃上げ額を反映した退職金の支払いを請求した。

    【判決】労使合意が労働契約の内容となったとし、『請求棄却』(朝日火災海上保険 最二小判 平6.1.31)


以上の判決のとおり、労働契約法第12条を考慮しつつも、最終的な判断は司法の場によるものと考えられます。社会保険労務士の立場としては早急な判断は避け、慎重な対応が求められるところです。



参考図書:菅野和夫 『労働法 第九版』弘文堂



下町ロケットと時間外労働

  • 2015.12.11 Friday
  • 10:26
社会保険労務士の家入です。

池井戸潤の小説「下町ロケット」がテレビドラマ化され、好調な視聴率を出しているようです。
佃率いる佃製作所が世界トップレベルの開発力・技術力を発揮し、1部ではロケットエンジンのキーパーツを開発し、成功させるというものでした。2部では心臓治療に使用する「人工弁」を開発するというドラマです。

ドラマにおいては、取引先からの無理難題やライバル会社との競争に対応していかなければなりません。それがこの物語の醍醐味であり、面白いところです。「困難を克服し勝利する。」という爽快感と感動を味わえます。


ところで、ドラマでは技術開発や納期への対応などで、従業員が徹夜して仕事している場面がみられます。これって労働法的にはどのようになるのでしょうか。

通常時間外労働をさせる場合は、36協定とよばれる労使協定を定めて届出る必要があります。原則として1ヶ月45時間、1年間で360時間となっております。1日平均2時間強になりますので、ドラマの佃製作所は対応できるでしょうか?

36協定には特別条項が付けられるので、一定の時間は延長できますが、「納期のひっ迫」「機械のトラブルへの対応」「大規模なクレームの対応」等の臨時的な事項に限られますので、それのみでの対応は難しいかもしれません。

通常、時間外労働については限度が定められていますが、新技術・新製品等の研究開発の業務は、延長限度が定められておりませんので、労使で協議の上決めることができます。しかし、この場合に青天井で決めることはできないと考えられます。心身の健康保持のためにも、1ヶ月当たり80時間以上の残業が数ヶ月におよぶ状況、もしくは1ヵ月でも100時間以上となれば労災認定基準にも該当し、使用者の安全配慮義務違反にも問われかねませんので十分な配慮が必要です。

最後に専門業務型裁量労働制について説明します。専門業務型裁量労働制とは、「業務の遂行の手段および時間配分の決定等を、使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚労省令で定める業務(19業種)の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者をその業務に就かせた場合に、その労働時間は労使協定で定めた時間働いたこととする。」というものです。

専門業務型裁量労働制を導入する要件…労使協定で次の事項を定めて届出ること。

  1. 対象業務…新商品もしくは新技術の研究開発等の業務など

  2. 労働時間として算定される1日当たりの労働時間数

  3. 対象業務の遂行の手段、時間配分について、労働者に対し具体的な指示をしないこと

  4. 対象業務に従事する労働者に対し、その労働時間の状況に応じた健康・福祉を確保するための措置を労使協定で定めたとおりに講ずること

  5. 対象業務に従事する労働者からの苦情処理措置を労使協定に定めるところにより講ずること

  6. 労使協定の有効期間(3年以内が望ましい)

  7. 次の記録を労働者ごとに労使協定の有効期間中と有効期間満了後3年間保存すること
    ‖仂欟般海暴昌する労働者の労働時間の状況、健康・福祉確保措置として実施した措置
    ∀働者からの苦情処理に関して実施した措置


  8. ※専門業務型裁量労働制において、プロジェクトチームを組んで開発業務を行っている場合で、チーフにより指示されたり時間配分が行われているものは対象外となりますので、注意が必要です。

日本の労働生産性は、ドイツに比べかなり低い(日本1に対しドイツ1.5)と言われています。多様な働き方を採用し、かつ労働時間を適正に管理して、労働生産性を上げていくことが懸命な方法かと思います。

裁量労働制

  • 2015.04.05 Sunday
  • 19:44
社会保険労務士の家入です。

「残業代ゼロ法案」といわれている労働関係法案の改正案が閣議決定されました。この法案には、「企画業務型裁量労働制」の対象を拡げる内容も盛り込まれているようです。この法案の新たな対象者には、課題解決型の営業職なども含まれているようです。

裁量労働制とは労働時間の計算を実労働時間ではなく、「みなし時間」によって管理するものです。労働時間の算定が困難な業務や業務遂行を、労働者自身の裁量に任せる必要がある業務などが対象となります。

裁量労働制には次の3種類の型があります。

  • 事業場外労働
    ・労働者が事業所の外で業務に従事しており、労働時間を算定し難いとき、所定労働時間労働したものとみなします。
    ・通常所定労働時間を超えて働くことが必要となる場合は、厚生労働省令で定めるところにより、その業務遂行に通常必要とされる時間、労働したものとみなします。(労使協定により定めた場合は、その時間を通常必要とする労働時間とします。)

  • 専門業務型…専門的な職種 a.研究開発 b.情報処理システムの分析または設計 c.新聞、出版などの取材・編集 d.デザイナー e.プロデューサまたはディレクター f.コピーライター、ゲーム用ソフトウエア開発など

      (適用要件…労使協定で次の事項を定めて、届出が必要)
      ・対象業務を特定
      ・1日あたりの労働時間数
      ・対象業務の遂行手段、時間配分について具体的な指示をしない
      ・労働者の健康と福祉を確保するための措置を講ずる
      ・労働者の苦情処理に関する措置を講ずる
      ・労使協定の有効期間
      ・記録の保管

    以上の事項を労使協定で定めて届出る⇒労使協定で定めた時間、労働したものとみなす。(みなしにより計算された時間が、法定時間を超える場合や深夜業になれば割増賃金が発生します。また、休憩や休日に関する規定も適用されます。)

  • 企画業務型…経営の中枢部門で企画、立案、調査、分析業務に従事する労働者で業務遂行を労働者の裁量に任せ、遂行方法、時間配分などに関して具体的な指示を受けない業務

      (適用要件…労使委員会の5分の4以上の多数決により次の事項を決議し、届出ること)
      ・対象業務
      ・対象労働者の範囲
      ・1日あたりのみなし労働時間数
      ・労働者の健康と福祉を確保するための措置を講ずること
      ・労働者からの苦情処理に関する措置を講ずること
      ・対象労働者の同意を得ること及び同意しなかった労働者の不利益な取り扱いをしないこと
      ・決議の有効期間
      ・記録の保存など

      効果…労使委員会の決議で定める時間、労働したものとみなす。

      ※定期報告を所轄官庁に届出る必要があります。


改正案により、企画業務型の裁量労働制が拡大されるようですが、使用者は安全配慮義務を負っていますので、労働者が心身の健康を害するような働かせ方をさせないようにする責任があります。適正な措置を講ずる必要があります。



身体障害者又は知的障害者の雇用義務等

  • 2013.04.20 Saturday
  • 08:28

社会保険労務士の家入です。
事業主は、雇用している労働者の人数に、次に示す障害者雇用率を乗じて得た人数以上の障害者を雇用しなければなりません。

  1. 一般事業主
    100分の2.0

  2. 国・地方公共団体
    100分の2.3

  3. 都道府県教育委員会等
    100分の2.2

  4. 特殊法人
    100分の2.3


一般事業主は、労働者50人雇用していれば1人の障害者を雇用する義務があります。

(注)雇用している労働者の人数を算出する場合において、常時雇用する労働者が短時間労働者の場合は、その1人を0.5人として計算します。

(計算例)従業員数が全部で100人で、そのうち短時間労働者が20人の場合(一般事業主)
(80(常時使用する労働者数)+20(短時間労働者数)×0.5)×100分の2.0(障害者雇用率)=1.8(人)
(注)法定雇用障害者数に1人未満の端数が生じた場合は、その端数は切り捨てます。


《障害者の雇用状況の報告》
雇用する労働者の数が、一般事業主は常時50人以上、特殊法人の事業主は43.5人以上の場合は、毎年1回、6月1日における身体障害者、知的障害者、精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者)の雇用状況を翌月15日までに、主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所長に報告しなければなりません。

《障害者雇用納付金の徴収及び障害者雇用調整金の支給》
法定雇用障害者数を未達成の事業主は、障害者雇用納付金を納付する義務を負います。また、法定雇用障害者数を超えて身体障害者又は知的障害者を雇用している事業主には、障害者雇用調整金が支給されます。

(注)常時200人以下の労働者を雇用する事業主には、当分の間障害者雇用納付金及び障害者雇用調整金の規定は適用されません。

企業は社会の一員であり、社会的な役割を担っていく必要もあるのではないかと思います。

健康診断(一般健康診断)

  • 2013.04.07 Sunday
  • 10:21
社会保険労務士の家入です。
企業経営において労働者の健康保持は重要事項です。今回は健康診断について記述します。

《雇入れ時の健康診断》
事業者は常時使用する労働者を雇入れるときは、医師による健康診断を行わなければなりません。医師による健康診断を受けた後3か月を経過していない者を雇入れる場合は、その者が健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、健康診断の検査項目に相当する項目は省略できます。

《定期健康診断》
事業者は常時使用する労働者(特定業務従事者を除きます)に対して1年以内ごとに1回、定期に医師による健康診断を行わなければなりません。

《特定業務従事者の定期健康診断》
事業者は特定業務に常時従事する労働者に対して、当該業務への配置替え時及び6月以内ごとに1回、定期に定期健康診断の項目について医師による健康診断を行わなければなりません。
特定業務とは

  1. 深夜業を含む業務

  2. 坑内における業務

  3. 著しく暑熱又は寒冷な場所における業務

  4. 異常気圧下における業務

  5. 重量物の取扱い等、重激な業務

  6. 強烈な騒音を発する場所における業務

  7. 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

  8. 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務



《給食従業員の健康診断》
事業者は事業に付随する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対して、雇入れ又は当該業務への配置替えの際に検便による健康診断を行わなければなりません。
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