同一労働同一賃金(2020年4月施行)

  • 2019.07.28 Sunday
  • 21:16
社会保険労務士の家入です。今日は同一労働同一賃金について書きたいと思います。

大企業は2020年4月1日から、(中小企業は2021年4月1日から)正社員と非正規社員(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣社員)の不合理な待遇差が禁止されます。

主な改正のポイントは
非正規社員について、

1、不合理な待遇差の禁止
 同一企業内の正社員と非正規社員との基本給や賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練などのすべての待遇について不合理な差を設けることが禁止されます。
2、非正規社員への待遇差について説明義務
 非正規社員からの説明を求められた場合は説明をしなければなりません。
3、行政による裁判外紛争解決手続の整備
 都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きが行われます。

 正社員との待遇差について、非正規社員は事業主に対し説明を求めることができるようになりますので、事業主は待遇差について説明しなければなりません。この場合に改正法第8条は不合理な待遇の禁止を規定していますので、「その差は不合理と認められるものであってはなりません。」 
 ここで、「不合理な待遇差とは?」という問題があります。その判断基準として、厚労省のホームページにガイドラインが示されています。「同一労働同一賃金ガイドライン」

 参考になる資料としては、厚労省のガイドラインと併せて「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」があります。

正社員と非正規の均等均衡待遇を行うためには、職務分析を行う必要があり、時間と労力を要します。また、非正規社員の待遇を向上させる為には原資が必要になります。早急の対応が必要です。

労働契約と就業規則

  • 2016.09.19 Monday
  • 12:13
社会保険労務士の家入です。

従業員の採用時に、個別に労働契約を締結したとします。その契約内容が就業規則の内容と相違していた場合に、どの様な問題が生じるのか考えてみたいと思います。

労働契約法では、12条において
『就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について は、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。』
とあります。

『企業経営の観点から、労働条件を引き下げる必要が生じて、個々の従業員がこれに同意していても、個別労働契約によって引き下げはできない。』つまり、就業規則の規定が最低基準としての効力を要することになります。労働条件を変更しようとする場合は、労働協約又は就業規則の改正ということになります。

ここで、判例を見てみたいと思います。

  • 賃上げ率と賞与支給率を維持できない小企業が、労働者の同意を得て、賃上げと賞与をより低い率で支給し続けた。これに対し労働者は、就業規則のとおりの率での支給を請求した。

    【判決】就業規則の基準を引き下げる労働契約が黙示に成立していたとして、『請求棄却』((有)野本商店事件 東京地裁判 平9.3.25)


  • 使用者と組合が、退職金について支給率を変更するための交渉を開始し、交渉妥結までの暫定措置として、算定額をその年の基本給額に凍結することを、口頭で合意した。これに対し退職者が、就業規則どおりに賃上げ額を反映した退職金の支払いを請求した。

    【判決】労使合意が労働契約の内容となったとし、『請求棄却』(朝日火災海上保険 最二小判 平6.1.31)


以上の判決のとおり、労働契約法第12条を考慮しつつも、最終的な判断は司法の場によるものと考えられます。社会保険労務士の立場としては早急な判断は避け、慎重な対応が求められるところです。



参考図書:菅野和夫 『労働法 第九版』弘文堂



目標管理制度

  • 2016.07.24 Sunday
  • 20:22
社会保険労務士の家入です。

近年の人事制度の趨勢は、成果主義人事制度という流れにあるようです。成果主義人事制度は「仕事の成果に対して報酬を支払う制度」と、一般的に理解されています。

問題は、成果をどのように表すかということです。営業などは売上高や営業利益という数字で目標を決定することができるので、目標設定は比較的簡単かと考えられます。しかし、総務部門などの数字で表しにくい部門の場合は目標設定が困難かと考えられます。成果主義を導入しようとしても、客観的な目標設定が出来るかどうかが問題になります。

ここで、「目標管理制度の導入」が有効であると考えられます。目標管理制度とは、期首に上司と面談の上今期の目標設定を行い、期中に面接を通して修正を行い、期末に設定した目標の評価を行うというものです。そしてまた来期の目標設定を行います。

多くの場合、目標達成について評価を行い、報酬制度と結びつけるということが行われるわけですが、前述しましたように営業職などの評価は客観的に行えますが、総務などの管理部門の評価は客観的に評価するのが困難です。各個人の目標は、会社目標と一致したものである必要がありますので、その意味においても数字で客観的に評価しにくい管理部門等は評価が困難です。

ここでの問題は、報酬制度と結びつけたことにより、全社的に整合性がとれるように客観的に評価する必要が生じたものと考えられます。営業部門と管理部門の整合性を保つことが必要になります。その作業は困難を伴い、多大な労力を必要とするものと考えられます。

よって、この問題を解決するための方法として、目標管理制度と報酬制度を別にすることが考えられます。報酬制度と切り離すことにより、評価時における賃金の全社的な整合性を図る必要が無くなり、担当者の作業量は大幅に削減されます。一方で企業の目標と各個人の目標を整合性をもって設定でき、その目標を達成することにより会社目標の達成を図ることができるものと考えられます。





職務給と職能給

  • 2016.07.16 Saturday
  • 21:09
社会保険労務士の家入です。

日本の多くの企業では、賃金制度として「職能給」を導入していると考えられます。職能給とは「職務遂行能力に対して給料を支払う」というものです。特徴として「人の能力は生涯を通じて伸びていく」という考えのもと、勤務年数が長くなれば、比例して能力は伸びていく。⇒能力が伸びれば賃金も上がっていく。という制度です。

「職能給」が多くの企業で採用された理由として、

  • 人事異動が容易に行える。

  • 賃金が勤務年数と共に上昇するので、従業員の定着率がよくなる。

  • 生活給との関連で、職能給を導入しやすかった。

などのメリットがあります。
長期雇用を前提に配置転換等を実施し、多様な能力を身に付けさせ、全社的な視点で業務を行うことにより効率的な経営が可能となります。日本企業は、知識と経験が社内に蓄積していくことにより、強い競争力を発揮してきました。

しかし、円高、人件費の高騰や海外企業との競争の激化などにより「職給」
を維持していくことは困難な状態になっています。新たな賃金制度として「職給」の導入が進んでいます。

「職給」は仕事と職務を結び付けて賃金を決定するというものです。欧米の多くの国で採用されている制度です。職務により賃金が決まるので、年功的に賃金が上昇していくといったことが無く、原則「同一労働同一賃金」です。デメリット(日本企業としての)として、職務の変わる配置転換を行いにくい面があります。つまり、「その職務がなくなった場合にどうするのか」という問題がおこる可能性があります。(職務変換を行えば賃金が変わる。)

世界の趨勢は「職務給」なので、日本企業においても対応していかざる負えないでしょう。いきなり「職給」から「職給」に変えることは混乱を招く恐れがあるので、日本の職場環境に合った制度を導入していく必要があります。一つの答えとして職責などの役割の大きさにより賃金を決定する「役割給」があげられます。
いずれにしても、日本の労働環境に合った賃金制度を導入していくことが重要です。


人材の活用・育成・定着

  • 2016.06.04 Saturday
  • 17:11
社会保険労務士の家入です。

トヨタ自動車は人工知能分野の投資を加速させています。このほど米Google傘下のロボット開発会社買収に乗り出すとのことです。ホンダも都内に人工知能(AI)の開発拠点を移し、大学や研究機関との連携を強化するとのことです。

カギとなるのは新技術を開発する研究者・技術者の存在であると考えられます優秀な人材の確保・定着が重要課題であることは自明の理でしょう。

人は働く意義に何を求めているのでしょうか?有名な理論に「マズローの欲求5段階説」があります。人間の欲求は
1、生きていくための基本的な欲求「生理的欲求」
2、安全安心に暮らしたいという欲求「安全欲求」
3、集団に属したいという欲求「社会的欲求」
4、他者から認められたいという欲求「尊厳欲求」
5、「自己実現欲求」
の5段階の欲求があり、「1⇒2⇒3⇒4⇒5」と下層の欲求が満たされると上層の段階に移行していくというものです。

(第6段階といて、他者を豊かにしたいという欲求「自己超越」の段階もありますが、ほとんどの人は到達できない段階です。)
(マズローの欲求5段階説については、多様な意見がありますが、大まかな考え方といては間違っていないように思います。)

第1、第2段階は生きていく為に必要な収入や住居などを満たすために働くわけですが、それが満たされれば次の段階に移行します。それでは、人工知能を開発する研究者や技術者は、どの段階でしょうか?自分の目標達成に向かい日々研鑽している段階は、第5段階の「自己実現欲求」の段階でしょう。この段階においては、年収や物理的な欲求よりも「自己目標の達成」に、より重きを置いていると考えられます。

日本の産業構造は、より高度な新技術や研究開発により新産業を生み出していく必要があります。そのためには高度な知識、経験をもった人材が重要な意味をもってきます。その人材を活用していかなければいけません。活躍してもらうためには、働きやすい環境を整備する必要があります。その環境整備に「マズローの欲求5段階説」を活用するのも1つの方法であると考えます。

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